ビジネスにおいて、多方面にわたる情報収集は、企業価値の向上、事業リスクの回避、より市場ニーズのある新製品・技術の創出のために不可欠な要素となっています。
しかし、世の移り変わりが早く、日々膨大な情報が生まれる昨今、従来型の情報収集では、上手く自社に必要な情報を把握できず、クライアントの重要なリリースや、法令情報の更新、SNSでの炎上、考慮すべきESG要件の開示義務の情報を見落としてしまうなど、網羅性や属人化の面で限界があります。
例えば Google 検索ひとつをとってみても、誰もが同じツールを使っているにもかかわらず、その人の検索のアプローチや市場に対する洞察の深さによって、到達できるアウトプットの品質は大きく分かれます。すなわち情報収集の重要性に比して、そのアウトプットの品質には個人差が大きく、業務のクオリティにも多大な影響を及ぼします。
本記事では、こうした課題を乗り越えるべく、現代における情報収集の重要性の変化や、効果的な情報収集の方法、AIによって最適化された新しい情報収集方法についてご紹介します。
なぜ情報収集をおこなうのか?
優れた情報収集のステップを確認する前に、情報収集が目指すところを確認する必要があります。
そもそも全ての情報収集は、「情報を集めること」そのものが目的ではなく、何らかの分析や洞察を導き出すことが目的です。ビジネスにおける情報収集とは、単なる調べ物のことではなく、ビジネス上の課題を解決することが目的にあります。
ビジネス上の課題に対して、その問題が起きている理由は何か、その背景に何があるのか、その問題は今後どのように変化するのかなどを見抜き、その上でどのようなアクションを取るべきかという洞察を得ることが、ビジネスにおける情報収集の役割です。
たとえば私たちは検索によって、あらゆる情報に瞬時にアクセスできる世の中にいます。しかし、たとえ Google で検索しても、ビジネスにおける意思決定で優位になる情報が一発で入手できることはほぼ皆無です。競争優位につながるインサイトは Google や X(旧Twitter) に転がっているものではありません(※)。品質の担保された信頼性の高い情報ソースに当たり、そこで得られた情報群を適切に読み解くことで、初めてビジネス上の意思決定に寄与するに足る知見が得られるのです。
※ビジネス上のアウトプットを検索結果のコピー&ペーストで済ませてよしとするような行為/態度は成果に繋がらないので価値がないですが、これらのツールの使用自体を必ずしも否定するものではありません。ただし、誰でも容易にアクセスできる情報経路であるため、やはり差別化できる情報が手に入るわけではないことは頭に入れておくべきです。あくまでも、基本的な事実や大まかな概況を把握する目的で、リサーチの入り口に使うべきツールでしょう。
目的の明確化
このことを踏まえると、情報収集をおこなうためには、まずその目的を明確化する必要があります。つまり、何についての洞察を抽出するべきかを定義することです。情報収集を進める時には、どのような「問い」に対しての回答を出すべきかという目的意識を持って、リサーチを進めなくてはなりません。
情報収集で最もよくある失敗は、情報収集の目的を見失い、時間を浪費してしまうことです。当たり前のことですが、どれだけ優れた情報収集をおこなったとしても、情報が羅列されるだけでは利益になりません。情報収集があくまで手段の一つであることを理解し、最短で成果につながるリサーチを実施する必要があります。
例えば、漠然と AI に関するニュースを眺めているだけでは、よくても ChatGPT についての表面的な理解を得られる程度ですが、AI の中でも「 AI の医療領域における活用」「画像生成 AI に関連する企業のニュース」「広告業界における AI 導入事例」といったテーマを持ち、その上で知りたい情報が市場規模なのか有望なプレイヤーなのか成長性なのかを明確にする必要があります。
情報収集の目的を明確化するためには、上司に資料やリサーチの要件をヒアリングすることも有用です。資料の目的以外にも、期限や予算、報告対象者、報告のフォーマット(口頭、ワード、パワーポイント)などを確認することで、認識の齟齬がなくなり、手戻りが発生するおそれが少なくなるでしょう。
このように「答えるべき問い」によって、リサーチ内容は大きく変わってきます。また、目的が明確であれば、必要な情報を効率的に集められるようになります。最初の段階で、可能な限り「答えるべき問い」を絞り込むことも、情報収集を成功させるポイントです。
情報の構造化
目的の明確化には、情報の構造化が必要となります。情報の構造化とは、対象となる概念を分析し、 MECE に分解していくことで達成されるものです。
再び、 AI を例にとって説明を進めましょう。先述したように、AI という大きな論点について闇雲に調べ始めるのは良い方法ではありません。
そうではなく、 AI という大論点を、「 AI の技術的背景」「 AI 関連企業」「 AI が搭載されているサービス」といったかたちで小さな論点に分解することで、初めてどの論点を重点的に調べるべきかという優先度付け(=目的の明確化)ができるのです。
なお、この際に過剰に MECE にこだわる必要はありません。例えば上記の3分類も、 AI にまつわる小論点を網羅しているわけではありません。しかし、あくまでもこうした思考のフレームワークは情報収集をスムーズに進めるための手段であり、論理ゲームをするために存在しているわけではないのです。
そのため、一定の網羅感さえ確認できれば、厳密性よりもむしろ切り口/コンセプトの面白さを優先するべきです。
適切な情報源の選択
情報収集の目的に応じて適切な情報源は変わってきます。つまり、リサーチの範囲や深さによって、リサーチ技法は異なるということです。
例えば、基本的なファクトや一般的な見解を手早く吸収して、仮説を立てる手がかりを得る際には、 ウェブ検索や文献検索、あるいは記事検索といった技法が主に使われます。
また、全体の傾向を体系的、定量的に理解する際には、公的な調査・統計や、民間の企業・団体が発表している調査レポートやアンケート調査などがよく使われます。
ここで注意するべきは、データソースの信頼性です。例えば、 Wikipedia や Yahoo!ニュースは日常生活においては非常に便利な情報源であることは確かです。しかし、これらのソースを鵜呑みにしてリサーチを終えることは、ビジネスではありえません。特にインターネット上の情報は、商業的目的を持って作られた情報や個人の意見が混在している可能性が高いため、情報が事実に基づいているか、意見や偏見に基づいていないかを判断する必要があります。
なぜなら、 Wikipedia は不特定多数の人物が編集可能であり、ビジネスで使えるレベルの信頼性が担保できないからです。 Yahoo!ニュースも、多くのウェブメディアの記事を転載しているプラットフォームであり、一次情報を発信しているわけではないため、情報ソースとしては不適切です。
情報ソースには信頼度から優先度を付けるべきで、この指標をあらかじめ次のように定義しておくことで、採用すべき情報ソースの基準が明確になります。
- 学術論文:最も妥当な科学的見解・議論が提示されていることが多い
- 公的機関の資料:非常に信頼できる(特に統計や政策などの一次情報)
- 大手報道機関:非常に信頼できる
- 調査会社などのレポート:多くの場合に信頼できる
- 上場企業:信頼してもよいが注意が必要。可能であれば、その発信の元となっている一次ソースを探したい。
- 未上場企業:信頼性は低い
- 個人のブログ・SNS:信頼性は著しく低い
継続的な情報収集フローの構築
単発の情報収集においては上記で挙げたスキルが重要になる一方で、業務として必要になるタイミングだけでなく、常に将来を見据えて情報のアンテナを張っておくことも重要です。
情報は大きく分けて、比較的変化が少ない「ストック情報」と、日々のニュースなどのように流れていく「フロー情報」に分類されます。
「生成 AI サービス」についてのリサーチを例に取ると、AIの基本的な概念や歴史、 ChatGPT の仕組みや、サム・アルトマンの経歴などについての情報は、ストック情報です。一方で、 AI スタートアップ Anthropic の大型調達や、ビル・ゲイツによるAIの将来に関する強気な発言などはフロー情報に分類されるといった具合です。
後者のフロー情報は、必ずしもすべてを追う必要はありません。しかし、フロー情報を継続的に観察することは、トレンドの変化に気付き、マーケットに対する解像度を向上させることにつながるはずです。
こうした蓄積は、難易度が高い問題解決の現場で役立ちます。業界に対する知見が浅ければ、そのビハインドを埋めるだけの作業が必要になりますが、日頃から市場や業界に対する洞察が積み重なっている状態であれば、その部分をショートカットできるからです。
自身の情報収集能力を高めるためには、業務として必要になるタイミングだけでなく、常に将来を見据えて情報のアンテナを張っておくことも重要と心得るべきでしょう。
企業の情報収集を Insights で効率化
上記で説明した優れた情報収集を誰もが実現できるようなツールが、 情報収集自動化ツール Insights[インサイツ]です。
その名の通り、ユーザーがビジネス上の意思決定に役立インサイト(=洞察)を得ることを目的として開発されたサービスで、「AIによって最適化された新しい情報収集」というコンセプトを掲げています。
具体的に説明していきましょう。
基本機能
基本的な機能はシンプルで、
- 特定のサイトの更新情報を通知する
- キーワードに基づいてウェブ上から関連情報を収集する
- 情報収集の際に AI を用いて柔軟にノイズを排除できる
というものです。
この3つの機能を組み合わせることにより、
- インターネット検索では見落としてしまう、深い情報に出会える
- 特定のテーマに絞った情報をリアルタイムで収集できる
- 信頼性の低い情報やノイズとなるデータは、すべて排除されている
- メール通知・CSV出力などの連携機能で、スムーズにデータ分析・活用につなげられる
という上記4点ができるようになっており、その結果として、RSS やニュース検索よりも圧倒的に高品質・効率的な情報収集を実現しているという点が Insights[インサイツ]の価値となっています。
ユースケース
実際のユースケースを見ると、より具体的な利用イメージがつかめるでしょう。
<大手ITコンサルティング企業様>
- 営業機会の発見を目的とした、取引先の人事異動情報の検知
- 自社が出展する展示会の開催情報の収集
- 業界の動向把握を目的とした、「AI」「DX」関連のニュースや論文の収集
<大手システム開発企業様>
- 取引先のプレスリリースのチェック
- 官公庁の入札情報の検知
- 補助金・助成金情報の検知
<製薬会社様>
- 法令変更の情報収集
- ブランド保護のための商標不正使用の監視
- ブランド保護のためのSNS上のレビュー監視
<人材系企業様>
- 大手飲食企業の出店状況の監視
- スキマバイト市場の動向に関するニュース記事の収集
<メディア企業様>
- 警察機関が発信している犯罪発生情報の監視
- 自社ウェブメディアで掲載する情報を自動収集するためのプレスリリースサイトの巡回
<その他>
- 新規事業立案のための、スタートアップの資金調達情報の収集
- ESG対応のための、官公庁HPの新着情報の監視
- 特定の法令変更の情報収集
いずれの場合も、目視による確認作業の工数が削減され、作業効率・チェック精度の向上が見込まれたということで好評をいただいています。ぜひ下記のフォームからお気軽にお問い合わせ下さい。